(この記事は、2020/11/16 21:45に、『note』で公開させていただいたものです。
noteで公開されている分は、いずれ、有料化か削除を行う予定です。
リンクも載せておきますので、表示されて全文読めたら有料化も削除もされていないということです(^-^) )
※フィクションです
-2025年-
国民の大半が考えていたより早くその時はやって来た。
国会で満場一致の可決となった法律の内容は
ざっくばらんに言うと「1度死ねる」というものだ。
この法律には「必ず1年後に生き返らなくてはいけない」という前提がある。
1年前、安楽死に関する法案はあっさりと否決されたことと相対し、似て非なるこの法律は潜り抜けた。
無論、全生物が願って止まなかった、生命体を生き返らせる技術が生まれたからこそ法律として成立する。
安楽死との違いは大まかに2つある。
1つは実行後に人口が減らないということ。
細かく言うと「死んでる1年間」は人口にカウントされないため減るのだが、1年後に元に戻る。
もう1つは、
「絶望・苦痛を体験して死ぬ」ということ。
そう、この法律は死を2度と味わいたくないものと脳にインプットさせ、命の大切さについて学んでもらうためのプログラムを許可するもの。
本当に生き返れるのか疑心暗鬼にならない希望者なら誰でも死ぬことができる。
ちなみに、死に方は1つの方法に限定される。
鋭い針を心臓にストレートに刺すことによる心臓死。
蘇生法が確立されているのは令和7年でも心臓死のみだからだ。
希望者を椅子にベルトで固定して、50センチも離れたところから非常にゆっくり、針を心臓めがけて動かすことにより恐怖を与える。
絶望や苦痛を与える必要はあるが蘇生後は健常に生活してもらうためにこのような方法を取る。
人を生き返らせる技術がある以上、法律制定前に亡くなった大切な人を生き返らせたいという要望は後を絶たないが、世界的な食糧難が依然と続く現代ではまだ許可されていない。
あくまでも「絶対に死にたくない」と思う人を増やすための国の施策だ。
この法律の制定日に自ら名乗りをあげた国会議員Aは、公式第一蘇生者となることが決定した。
1年後の蘇生のために、誰よりも早く国の許可を得てこの世から消失する。
〜 其の二へ続く